2021年5月29日土曜日

2021.05.29 横浜の寿町を歩いてみた

● 噂に聞く寿町に行ってみた。日本3大ドヤ街と言われるが,さてその実態は?
 高齢者が煙草を友として暮らしているところという感じ。昔は知らず,今は穏やかな空気だ。
 以前は暴力団が不法賭博をやっているとかね,けっこうそんな記事を見たものだけど。羽振りのいい貧乏人は,自分よりさらに貧乏な人間を喰いものにしているに決まっているんだよね。

● 東京の山谷もドヤ街の気配はだいぶ薄くなっている。もはや普通の下町に近い。
 だいぶ前にドヤ街の浄化(?)が試みられたらしい。昼間でも女性のひとり歩きは憚られるようでは困るじゃないかということで。
 該当を増やしたり,コミュニティセンター(集会所)を作ったり。その結果どうなったかというと,ドヤ街が住みやすくなった。
 かつては,ここは自分がいるところじゃない,しのぎのために一時的にいるだけだ,と捉えられていたドヤ街が,ついの住処になった。ここにいれば,集会所で将棋を指したり碁を打ったりできる相手がいる。ここを出てしまえば自分は独りになるけれども,ここにとどまっていれば仲間がいる。
 しかも,集会所は冷暖房完備だ。寝転がってテレビを見てみてもいいのだ。この世の天国だ。

● というわけで,彼らはドヤ街に定着し,生活保護ライフを満喫するようになった。という話を聞いたことがある。
 そうこうするうちに,ドヤ街でも高齢化が容赦なく進行し,たまに来る飯場の仕事も,彼ら高齢者ではなく,パキスタンやバングラディシュから来ている若者たちが取っていくようになった。
 仕事もなく,生活保護が固定化される。そういう状態になったらしい。

● しかし,それで終わりではない。高齢化すればまもなく死ぬ。生活保護ライフを満喫していた高齢者が亡くなった後,寿町はどうなるのか。それを考えなければならないのではないか。
 生活保護で生きていきたいという人たちが次々にやって来て,亡くなった人の後を埋めるのか,そうではない別の状態になるのか。
 個人的には,そう遠くない将来に,国民全員に生活保護を適用する(ベーシックインカム)ことになると思っているのだが,それを機に寿町が別の意味で注目されるようなことはないんだろうかな。

● ついでに申さば,かつての日本はこんな感じだったのではなかったか。少ぉし働いてあとはボーッとしているか,やらなくてもいいことばかりやっていたのが男たちの常。都市なんて少なかった時代の日本の。といっても,半世紀前までの日本ですよ。
 勤勉は日本人のデフォルトではないと思っているのでね。日本人が勤勉だなんていうのは高度成長と産業構造の高度化(第3次産業化)以後の話ではないんですかねぇ。

● 何かあったらここに来ればいい。安い家賃で部屋が借りられそうだし,交通の便は言うことなしだ。
 こういうエリアがあるということが,逆にホッとさせてくれるっていうか。ま,これはぼくがよそ者だから言えることであって,地元にしてみたらまた別の言い分があるに違いないんだけど。

● 寿町,不老町,蓬莱町,翁町,長者町,永楽町と縁起の良い名前が付いているのは,ここが埋立地だからだろう。土地にシガラミがなかった。まっさらな土地にはこういう名前を付けたがるものなのだね。
 富士見町にならなかっただけマシというものだ。まぁ,富士見と付けるのは戦後の流行ですかね。
 ところが。近くに富士見町があったんでした。あらまぁ。

● 寿町を離れて,羽衣町の横浜弁天(厳島神社)。狭い境内に弁財天や稲荷も祀られている。
 金運の神様ですか。人が生きていくうえで,最も希少なものはお金だという時代がずっと続きてきたもんな。お金さえあれば何でも買えて幸せになれる,というのが幻想ではなくて揺るぎないリアリティーを持った時代が,つまり人類史のすべてだといってもいいくらいだ。
 足らないものを望むのは当然の話だ。ここに来て,そのお金信仰が少し揺らぎだしているように思えるんだけれどもね。

● 横浜村の総鎮守で,かつてはもっと広い敷地だったらしい。神社も人間社会で生き延びていくしかないわけだから,栄枯盛衰は付きものだ。
 ちょっとした偶然で大きくなったり,忘れ去られたり。初期値の僅かな違いが大きな結果の違いを生むという複雑系の話になるんでしょ。そう考えて納得しておくより仕方がない。

2021年5月21日金曜日

2021.05.21 ホテル宿泊に飽きた

● 今回は16日から川崎のホテルに宿泊中。14泊の予定。その後,東京で6泊,さらに横浜に移って4泊。ほぼ1か月のアーバンバカンスを自分たちに許すことにした。
 のだが,5泊しかしていない状態で,もう帰りたくなっている。飽きちゃった。

● 第1に,すること,できることが,何もない。博物館や美術館をけっこう精力的に回っているのだが,そんなものは畢竟,暇つぶしにすぎない。
 自宅の方ができることが多い。自宅にはPCがあるからだ。では,PCを持ってくればいいかというと,そう単純なものでもない。

● 第2に,夫婦が同じ部屋で寝なきゃいけないこと。これがけっこうなストレスになる。相方はぼくの鼾で寝られないのじゃなかろうかと思う。
 夫婦でも別々に寝ないと疲れがとれない。自宅ではそうしている。どちらのご家庭でも,自宅では知らず知らずのうちに自分に合うようにカスタマイズしていらっしゃるのではないですか。

● 第3に,食べすぎ飲みすぎ。身体が参っている。根っからの貧乏性がそれでも食べることをやめさせない。
 朝からご馳走が並ぶのだ。胃袋以上に目が食べたがる。目の欲望を満たすと,1日1食でもいいくらいだ。そこに更に食べるのだし,夜は飲むのだ。

● 3月末からこれで3回目。飽きて当然かも。が,相方は全く飽きないらしい。貪欲さというか,楽しもうとする欲望が違う。あるいは,楽しめる能力が違う。楽しみの素材を発見する能力というのかな。
 これはひとり相方だけではないと思う。女性一般に当てはまるのではないか。女はすごい。すごさの所以は2つあるようだ。物欲の強さと反省しないこと(現状肯定)だ。

2021年4月16日金曜日

2021.04.16 コロナ感染拡大に関するGoogleのAI予測は当たるのか?

● 8日に「まん延防止等重点措置 東京都に加えて京都府・沖縄県も適用へ」というニュースがネットに載った。
 これってGoogleのAI予測が当たった? なんで予測できるんだろうね,こんなことを。

● でも,大衆はもうほとんど反応しないよね。勝手に笛,吹いてろよ,って感じになってる。
 医療機関でも保健所でも,長期にわたる激務を強いられているだろう。やるに値する激務なら耐えられるだろうけれども,虚しいだけの激務は一番応えるよね。これって本当に必要なの? と思いながら長時間働くのは一番身体によろしくない。そういう仕事をさせていないかってことなんだよねぇ。

● ぼくはといえば,緊急事態宣言中も週末は東京に出ていたし,宿泊もした。対応を違える必要性はあまり感じない。
 三密を避け,盛りあがっているところに近づかず,人に移さないようマスクを着け,手指消毒をこまめにする。そこさえ外さなければ,外的環境はあまり関係ないというのが経験則だ。
 というか,こういうときだからこそ東京にお金を落とさなきゃ,となる。ま,東京で遊びたいだけなんだけどね。

● Google AI の予測では,陽性者数も死亡者数も今月半ばから大幅に増えるんですよね。当たってほしくないけどねぇ。
 と,そこから1週間が経過したら,都知事が「東京に来ないでいただきたい」と他県民に要望したというニュースが載った。
 「来ないでいただきたい」いうのはよくよくのことだ。都民に都外に行くなじゃなくて,都民じゃない人に東京に来るなと言うわけだから。

● 東京は日本一の観光地でもあって,都外からの来訪者で成り立っているところも大きい。そういう人を見捨てちゃっていいのかい? そこまでの状況かね。
 18日から11泊12日の予定で東京に遊びに行くつもりなんだけど,やめた方がいいのかね。都営の美術館や博物館の類がすべて閉館になるのであれば,見合わせた方がいいんだが。ま,都の施設は閉鎖でしょうねぇ。

● いや,行きますけどね。隠居の身だから時間は売るほどあるんだけど,お金はそろそろ枯渇してくる。
 にもかかわらず11泊とは何ごとかといえば,11泊しても宿泊費は45,150円ですむんですよ。もちろん,安いホテルに泊まるんだけど。
 ホテル側はそこまで追い詰められているんだよね。この状態でキャンセルなんて,人でなしのすることだと思いますよ。

● とはいうものの,ですよ。Google AI は,ここから急激に増えていくと予測しているんですよね。
 東京の総人口を考えれば,1日の感染者数が300人だろうと1,000人だろうと,そんなのは誤差の範囲内で,対応を変えるような話ではないんだろうけどねぇ(高橋洋一さんの受売りなんだけど)。
 個人的に最も怖れているのは,11泊中に行く予定にしている演奏会が次々に中止になってしまうことだ。

2021年4月5日月曜日

2021.04.05 隅田川を歩く 千住大橋~白鬚橋

● 東西線の日本橋~西船橋を乗って,めでたくメトロ完乗。都内に戻ってきた。茅場町で日比谷線に乗換え,再び北千住に。
 3日に隅田川の上流端から白鬚橋まで歩くつもりが,北千住駅の近くで終わってしまったので,その続きをやろうというわけだ。

● が,茅場町からひと駅乗って,人形町で下車した。雨があがったことを確認して,半蔵門線に乗った。押上から東武線に乗り換えて,東向島で降りて白鬚橋に出,白鬚橋から北千住まで隅田川を遡ることにしよう。
 要は,隅田川の上流端から白鬚橋まで繋がればいいのだから。

● 東向島駅に着いた。ら。雨が降ってましたよ。どうする? 撤収するか。
 決められなくて,グズグズすること,30分。雨が引っ込んでくれた。結果的にはグズグズして正解だったわけだが,1人で登山なんかするといの一番に遭難するタイプだな。早めの撤収を決断できないわけだから。

● 国道6号(水戸街道)から明治通りに入って,白鬚橋。この橋を直進すれば山谷,三ノ輪を経て日暮里に至る。
 そのコースも魅力的ではあるが,ここから隅田川を遡上する。ここは意地でも左岸側を。
 すぐに水神大橋に至る。対岸は南千住。
 橋の下にホームレス殿がお休み中。この光景は白鬚橋の下流では何度か見かけた。が,一昨日は,上流端から歩いたわけだが,一度も見なかった。ホームレス殿が川を住処とするのは,このあたりから下流になるらしい。

● テラスから上に上がったところにもこんな光景が。ホームレス殿なのか,サイクリストがソロキャン中なのか。
 いや,前者なのだが,この世界も変化に洗われている。彼らの住処がダンボールでできていたのは今は昔のことになりつつあるのかもしれない。
 自転車1台で運べる荷物だけで人は暮らしていける。神の大いなる教示である。どういうところにテントを張ればいいのか,といったあたりも含めて,ぼくらが学べることはたくさんあると思うよ。

● 順調に遡上中。楽器を鳴らしている3人組。この光景は一昨日も何度か見かけた。1人だったり,グループだったり。
 コロナで増えているんだろうか。コロナは関係ないんだろうか。白鬚橋の下流を歩いたときには,一度も遭遇しなかったのだが。

● ここから隅田川は左に曲がっていく。右から直進で合流してくるのが,わかりづらい名前なのだが旧綾瀬川。架かる橋は綾瀬橋。
 ここでテラスは途切れているので,その綾瀬橋を渡って先に進む。マンションの隙間を抜けて隅田川に戻った。

● 千住汐入大橋が眼前にあった。土手にキレイに花を作っている。誰がやっているのだろう。河川管理者がやっているはずがない。
 太成倉庫が見えてきた。一昨日はここから一般道に出て,それっきりになったのだ。何やら工事中のようなのだが,いずれここは通れるようになるんだろうか。
 右岸側はずっとテラスが続いている。右岸側を歩いていれば,一昨日のうちに白鬚橋まで余裕だったなぁ。
● ともあれ。これで上流端から白鬚橋まで歩いたことになる。残りは勝鬨橋から東京湾(河口という感じじゃないんだよね)までの短い距離だ。今から行ってもいいんだけども,明日に回そう。
 ということで,北千住駅から今日何度目かの日比谷線で八丁堀。京葉線で潮見。日中,南船橋から京葉線に乗ったときは,そのまま潮見まで乗ってしまおうかと思ったけど,そうしないでおいて良かったよ。

● 今日は1日,メトロに乗り続けた。24時間券が大いに役に立った。
 都内を移動していると,メトロに600円分乗るなんて簡単そうに思えるのだけど,これが意外にそうでもない。4回乗れば元は取れるのだが,これくらいだったら歩こうとなることが多いし,実際に歩いた方が楽しかったりもするわけで。
 しかし,今日は600円の倍以上乗ったんじゃないかと思う。24時間券,ありがたし。

2021.04.05 東京メトロ全線完乗

● 今日は雨が降っている。が,午後には晴れるらしい。
 京葉線を八丁堀まで乗って,日比谷線に。北千住まで行って,千代田線の北千住~北綾瀬間に乗っておこうと思う。この区間が未乗なので。雨が降っていても,これならできる。

● 日比谷線の電車が南千住止まりだった。この駅は山谷の最寄駅になる。今の山谷をドヤ街のイメージだけで捉えるのは間違いで,コロナ以前は外国人バックパッカー(特にカップル)の聖地になっていた。
 この駅があればこそ,山谷は交通至便で,聖地にもなり得る(浅草まで歩いてもいいんだが)。メトロ日比谷線とJR常磐線がこの駅から使える。都心に直通する。使うことはないだろうけれども,つくばエクスプレスもこの駅に停車する。

綾瀬駅ホームから見る綾瀬の街
● 千代田線は北千住からJR常磐線に乗入れて我孫子あたりまで直通するんだけども,綾瀬~北綾瀬のひと駅間は盲腸線。運転本数もグッと少なくなるっぽい。
 北綾瀬って,プチ高島平みたいなところですか。大勢の人が肩寄せ合って暮らしている,みたいな。集合住宅がボンボン建っている。

● しっかし,なかなか雨がやまないなぁ。雨があがれば,隅田川歩きの続きをやりたかったのだが,やまないなら仕方がない。東西線の日本橋~西船橋間が未乗だから,この際,それにも乗っておくことにしよう。
 日比谷線,銀座線と乗り継いで,日本橋に出ることにする。まだ雨はあがっていない。やむのかね。

● 日本橋では丸善を覗いてから東西線に乗って,終点の西船橋に着いた。これでメトロにはすべて乗ったことになる。だから何なんだ? ホントにねぇ,だから何なんだ?
 とにかく,メトロ全線完乗ということで,ひとつよろしく。感慨はほぼまったくないんだけど。

● ここまで来れば,もうひとつ,やっておきたいことがある。京葉線,武蔵野線の魔のトライアングル(?)問題だ。
 東京から京葉線の蘇我行きに乗ると,市川塩浜から二俣新町を経て南船橋に至る。府中本町行きに乗ると,市川塩浜から西船橋に出る。残りの1辺にまだ乗っていない。これに乗っておきたい。

● いや,実際には造作もなかった。ひと駅だもんね。あっという間に,かつては長閑以外に何もない野原であったろう南船橋に着いた。これで三角形の三辺に乗ったことになる。
 帰りは東京行きに乗り,市川塩浜から府中本町行きで西船橋に戻った。あらためて,2辺にも乗り直したということね。

● 西船橋駅内の立食いそば屋。実質は「いろり庵きらく」かと思ったんだけど,そうでもないっぽい。天ぷらそば,410円。
 てか,JR側の駅構内はいろんなお店があって,さながら1つの街のようですよ。総武線と武蔵野線が交差する要衝でもある。ホームの番線も12番線まである。
 そこに東西線と東葉高速鉄道が乗入れてるわけだから,田舎者にはちょっと戸惑うこともありました。

● 東西線って快速運転もしてるのね。西船橋を出ると浦安まで停まらない。その次は東陽町。以後は各駅停車。これだと浦安から門前仲町までちょうど10分。かなりの高速でしょう。

2021.04.05 プリンス潮見,4泊目

● 4日。ホテルの近くに弁当屋がある。そこで色々買いこんできて,部屋で飲む。毎晩,飲んでしまう。量は大したことないんだけど。

● 619号室に移動した。最初が617号室だったので,その隣ということになる。
 ともあれ,617→456→619 と移動しているのだが,いずれも同じタイプの部屋。一番安いスタンダードの部屋だと思うのだが,ビジネスホテルの3倍近い広さがある。
 ぼくならここに住める。ホテルとしてならいいけれども,住むには少し窮屈だとは思わない。

● 今どきのホテルは水回りが良くなっている。トイレと風呂はそれぞれ個室。風呂には洗い場があることも必須。ユニットバス的なものはあり得ない。
 昔はそれなりのホテルで客室のソファやデスクは立派でも,水回りがお粗末だった。今の目から見れば。プリンスなら最も古い高輪に泊まってみれば,このあたりの事情は歴然とする。

● 今日から朝食なしで宿泊料は7,750円。それで,ホテルが5,000円分の金券をくれる。この金券はもちろん,ホテルでしか使えないわけだが,潮見駅付近にいくつもあるマンションの部屋を借りるより,このホテルに住んでしまった方が安いんじゃないか。
 サウナもジムもタダで使える。ランドリーもありますよ。600円だから市中のコインランドリーと同じ値段でしょ。

● ま,5,000円の金券は元を取ろうとしちゃいけません。捨てるつもりで。レストランの入口で売られているレトルトカレーを買っておけばいい。買ってもし不味ければ捨てる。クッキーもあるんだけど,品薄状態でなかなか買えないっぽいので。

2021年4月4日日曜日

2021.04.04 無印良品 銀座-民藝 生活美のかたち展

● 銀座,並木通り。無印良品銀座を覗いたら,6階のギャラリーで「民藝 生活美のかたち展」が開催されていた。
 無印のデザインを支えてきた深澤直人さんが日本民藝館の館長に就任しているのだから,これからもしばしばコラボするのだろう。

● 民藝とはそもそも何かについては,この巡回展のリーフレットの挨拶文で深澤さんが解説している。「観賞用としての雅な逸品ではなく,大衆に向けて作られた温もりを宿す実用の手工芸品の中に,健全で尋常な美が宿っていることを柳は見出しました」ということ。
 したがって,たいていの場合,作者不明となるのだろう。作者という概念自体が成立しない世界なのだろう。
 柳は「用の美」という見事な言葉をも残している。後世の人は機能美などとも表現するようになっているが,ほぼ同じ言葉と理解してよいのだろう。

● 深澤さんはまた,無印良品について「印のついたマーケティング戦略に基づいたものづくりに抵抗し,質素で豊かな真の価値を目指して1980年に設立されました。それはプロダクトによる現代の民藝運動と言えるかもしれません」と言っているが,これには賛否両論があるだろう。
 目下のところ,ぼくは否の側に立っている。無印は印のひとつにすぎないように思えるからだ。

● この巡回展はかなり見ごたえがあるものだった。展示物の多さがその主因だが,この建物の6階の空気感によるところもあると思う。重苦しくなく見通しがいい。
 建物じたいではなくて,中にいる人間が作りだしているものだと思うのだけども,長居するのが苦にならない感じというかね。

● で,ザッとだけれども,展示を見終えたあと,これら昔の民具を美しいと思えるか思えないかは,審美眼の問題ではなく,自他の生を慈しめるかどうかで決まるのだろうな,と思った。
 美しいと感じるより,使いやすいと思う。その視点でどこまで受けとめられるかは,生活者としてどれだけ真摯に生活に向き合ってきたかで決まる。

● 以下はまったく余計なことなのだが,先に,無印を民藝に比することについては否だと言った。その理由の1つは無印製品が企業体(株式会社)によって生みだされているからだ。つまり,全体を総べる者,管理する者がいるからだ。
 もちろん,いていいんだけれども,どうもこの経営側に問題があるのじゃないかと思うことが,最近の良品計画には多い。たとえば,このニュースだ。

● もしこれが本当なら(本当なのだろうが),良品計画の経営陣はその資質に疑問符が付く。状況がわかっていない正真正銘のバカなのか。あるいは中国に対する損切りをする決断力がないのか。
 現時点でこの会社の株を買うわけにはいかないだろう。社員の苦心と営為によって積上げた富を,経営陣がその愚鈍によって蕩尽してしまっている図が浮かんできてしまう。

● 本体の日本民藝館も今月の今日,リニューアルオープン。本館は月曜以外は開館しているが,柳宗悦の居宅だった西館は第2・第3水曜日&土曜日のみ開館。
 早めに行って,ゆっくりと見て回る時間を確保したいものだ。