● 昨日から夫婦で竹芝のインターコンチネンタル東京ベイ,1430号室に宿泊している。2泊で,明日にはチェックアウトする。
帰ったらメッセージありのランプが付いていた。何事かと思ってフロントに電話をした。
● 客室でタバコを吸うなと言う。客室を清掃したときにアイコスが見つかったのだ,と。
アイコス? 加熱式タバコの喫煙具のひとつらしい。
● そんなことのあるわけがない。まずもって,当方,煙草は吸わない。相方には喘息の気があって,喫煙どころではない。ぼくも禁煙してだいぶ経つ。加熱式の器具など買ったことも触ったこともない。
ちなみに申せば,電子タバコにも興味がない。もし禁煙を破ってタバコに手を出すことがあるとしたら,加熱でも電子でもない,鼻の穴から煙を出す普通のタバコにする。
しかし,よしんば吸うとしても,客室で吸うほど不心得者ではない。
● ともあれ,こちらが触ったこともないアイコスなるものが,ぼくらのいる1430号室で発見されたからと難詰を受けている。あるはずのないものがあるという摩訶不思議な現象が起きた。
何かの手違いによるのではないか。たとえば,ぼくらの前に泊まった人のものだとか。
● 前の人のが残っているなどということはあり得ません,と断言する。まぁ,それはそうだ。ぼくらもそんなものをこの客室で見かけたことはないのだから。
とにかく。アイコスを持ち込むのは規則で禁止されている,こういうことは二度としないでもらいたい,と,まず言われた。
● ぼくらは非喫煙者である旨を伝えたのだが,どうにも埒が明かない。清掃担当からそういう報告があがっているから,と繰り返されるばかりだ。
しかし,冤罪は晴らしておきたい。だから,ここまで述べ来たったわけだが,こちらに真偽を確認せず,吸ったという前提で話を始められたのが,こちらの心象を甚だしく害している。今どき,警察でもそれはやるまい。
● 後刻,彼女の上司と思しき男性から電話があった。どういう電話だったかというと,私の責任で(アイコスは)なかったことにしておきます,と。
日本語の使い方に神経が届いていない。なかったことにするというのは,本当はあったのだがということを前提にしている。
こちらはなかったと言っているのであって,本当はやってしまったんだけれども,俺は客だ,なかったことにしてくれ,とゴネているのではない。
● 職制の問題で清掃部門が「あった」と言っていることを,それは間違いだとは言えないのかもしれないけれども(現場に立ち合っていないのだから),そんなことはこちらは与り知らぬ。
さらに,もっと広い部屋に移ってもらうこともできる,チェックアウトを遅らせることもできる,と言うのだが,そういうことではないのだ。申し込んだとおりの部屋を用意してもらっているのだから,それ以上を要求するつもりなどない。
● 何ゆえ,なかったことにできるだの,広い部屋に移ってもらえるだの,本筋を外した話を延々とするのか。
申しわけなかった,こちらのミスだった,と謝ってもらえばそれですむ話なのだ,こんなものは。
それをしないで,利益誘導して丸めこもうとするだけでは,なかった事実を捏造して,宿泊客を嬲るのか,このホテルは,ということになってしまうではないか。
客室の棚に自宅から持ってきた手帳やこちらで買った文房具を置いている。上の写真のとおりだ。写真の一番上に写っているものをアイコスだと思ったのではないか。
● 一応,教えておく。これはボールペンといって,文字を書くときに使う道具だ。タバコを吸うためのものではない。
しかし,ボールペンは誰がどう見てもボールペンにしか見えないはずだ。サインペンやシャープペンだと思うことはあるかもしれないが,これをアイコスだと思ったのなら注意散漫というほかはない。
● それを過失と呼ぶなら呼んでもいいが,いささか以上に粗忽な過失になるだろう。
粗忽さが出発点で,そこからまっすぐに「アイコスを持ち込むのは規則で禁止されている。こういうことは二度としないでもらいたい」に到り,さらには「なかったことにできます」にまで登ってしまったのだとすれば,論外の沙汰と言う他はない。
ただなぁ,このホテルの清掃部門はホテル内の組織の一部ではなく,外部委託(または請負)だろう。実際に清掃を担当している人間は,時給いくらのアルバイトで,ひょっとすると外国人かもしれない。このボールペンをアイコスだと思ってしまうのはやむを得ないのかね。
● 言うまでもないが,今回の宿泊料は契約どおり全額を支払う。つまり,明日のチェックアウトまでは通常の利用を継続する。憤然として席を蹴ることはしない。そんなことをしたら,今夜は野宿をしなければならなくなるからね。
ただし,二度と来ない。根に持ってしまうことになりそうだ。が,こういう扱いを受けて根に持てないようでは,人としてどうなのかとも思っている。