2019年6月16日日曜日

2019.06.16 年金問題-金融庁の報告書:どうやって自分を守るか

● 年金のほかに2千万円が必要だ,と。どうも2千万円が独り歩きしている感がある。
 この報告書は受け取らないとか,野党の追及とか,参院選への影響とか,そんなことはどうでもいい。興味もない。
 そもそもが年金だけで老後は安泰だなどとは厚労省も言ったことはないし,国民だってそんなふうには考えていなかった。騒いでいるのは,にわかに湧いてきた批判大好き層だけなのでは。

● この問題の本質は,宇佐見典也氏がTwitterで指摘している。ゼロ金利が原因だ,と。言われてみれば,膝を打ちたくなる。そのとおりだからだ。
 5%の利子が付くのであれば,2千万円の預金があれば,1年に百万円の利子収入がある(郵便局に定額預金しておけば,7%や8%の利子が付いた時代があったのだ)。10年で1千万円,20年で2千万円だ。年金と併せれば充分な額になる。
 そういう計算だったのだと思う。昔から年金だけでやりくりしようということではなかったのだ。年金は基本的に変わっていない。1年に百万円の利子収入がなくなったということなのだ。

● 元金の2千万円には手を付けなくてすんだ。手を付けなくてすむということは,次世代に引き継げるということだ。
 今は利子がないんだから,元金を取り崩すしかない。死ぬときにはスッカラカンになっている。そこの違いだと思う。

● 預金利子が下がりだしたのは21世紀に入ってからではないか。ゼロ金利になることなど,当時予測できた人は全国探しても一人もいなかったろう。
 それを今になって政府を非難するのは当たらない。年金が変わったのではなく,年金を取り巻く状況が大きく変わっただけ。
 金融市場が生んでいた利子分も含めて,年金額を改定せよともし言うのなら,それは言っていることが無茶苦茶だ。できるはずがない。金融市場の変化を年金がヘッジするなどというのは,およそあり得ない話だ。

● したがって,問題はゼロ金利がこれからも長く続くのか,それとも早晩終焉を迎えるのかということだ。
 後者の可能性はあまりない。金利が下がるのは,先進国に共通の傾向だし,お金の借り手が急に増えるとは考えにくいからだ。
 トヨタのようなところは,そもそも銀行など必要としない。自社に貯まっている資金でたいていのことは間に合うだろう。銀行にしてみれば,借りてくれる相手を探すのに苦労中ではないか。

● 自分の生活にひきつけて考えてみても納得できる。基本,以前よりお金は要らなくなっているだろう。かつては音楽を聴こうとすれば,CDを買うしかなかった。アルバムなら3千円ほどだったか。TSUTAYAのようなレンタルショップができてだいぶ助かったが,それでも当初のレンタル料は500円ほどではなかったか。
 それが今では音源はインターネットに転がっている。タダで手に入る。CDを買う必要も借りる必要もない。
 一事が万事,そうなってきた。総じて,娯楽にお金がかからなくなってきた。そこまで含めてインターネットの影響は大きい。企業活動でも同様の事情があるのではないかと思う。

● 資金需要は減る。需要が減るんだから金利は下がる。ここは当面,変わるまい。つまり,預金利子はないものと考えなければならない。
 けれども,ぼくらは自衛しなければならない。誰も守ってくれないんだから,自分で策を立てなければならない。どうすればいいか。

● ぼく一個は預金を捨てて株に向かうしかないと思う。利回りから外国株を勧める人もいるけれども,勝手のわかりやすい国内株の方が安心できる。
 国内株でも3%程度には回せる。その程度の配当利回りを考えるのは充分に現実的な話だ。2千万円を3%に回せれば,年間60万円の配当収入が得られる。20年間で1,200万円だ。年金にこれだけの付加があれば,問題なくやっていけるだろう。

● 株式なのだから元本保証はない。2千万円が紙くずになってしまう可能性だって,理屈のうえではゼロではない。それゆえ,二の足を踏む人が多いだろうと想像する。
 その2千万円は虎の子の退職金かもしれない。虎の子を株のような不安定なものに投じるのは不安だ。
 特に,それまで株式投資に手を染めることなく定年に至った人にとっては,清水の舞台から飛び降りるようなものかもしれない。結局,飛び降りることができずに終わる人が多いような気もする。

● その場合はもう仕方がない。虎の子の2千万円を取り崩しながら,老後を生きるがよい。
 実際のところ,年金のほかに2千万円が必要というのは,それなりの水準で生活するというのが前提のようにも思えるのでね。ぼくなら,老夫婦2人で年金の20万円があればどうにかやっていける自信がある。

● 若い人の場合は,若いうちに株式投資に慣れておくことを勧める。銀行に積み立てるだけの人と,株を買って3%の配当金を受け取り続けた人との間には,金額以上の差が生じるのではないかと思う。おそらく,人生観にも影響があるはずだ。
 言うまでもないが,損をすることがある。しかも,一再ならず。が,実地にそういう経験を積み重ねていくことが大事だ。
 くれぐれも,汗水流して得た所得が不労所得よりも尊い,などという前世紀の遺物に絡め取られないように。絡め取られている人はよもやいないと思うけれども。

● 老爺心ながら(つまり,初歩的な指摘になるのだが),配当利回りだけに着目して買う銘柄を決めないように。株価が下がれば利回りは上がる。あまりに利回りがいい銘柄は,株価が下がっているのかもしれない。最悪の場合,倒産要因を抱えているかもしれない。
 配当利回りよりも株価そのものが上がると踏んだ銘柄を買うのは鉄則。しかし,あまり儲けよう儲けようと血走らないこと。株は買ったら買ったことを忘れているくらいがちょうどいい,というのは今でも通用する金言だと思う。

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