2020年9月1日火曜日

2020.09.01 パソナの本社機能移転

● 「パソナが本社の主要機能を淡路島に移します。経営企画など約1200人が対象。淡路島では農業などを手掛けて既存施設があり,感染症対策を含めた事業継続計画の観点から移転します」とのニュースをネットで見た。
 本当に感染症対策ためなら,過剰反応というしかない。テレワークが普及し,ネットによって都鄙の情報格差がなくなると言われるものの,東京に本社機能があってこそ,会社としての意思決定ができる。東京が持っている諸々のメリットを過小評価していないか。

● 首都機能移転も上手く行かなかった。行くわけがない。頭の中だけで発想するから,ああいう膨大な無駄が生まれた。大学もそうだ。多摩に移転した大学の都心回帰の動きがある。
 企業も同じ。目先の動きに敏感にならなければいけない場合と,そうなってはいけない場合があって,この件は後者に属する。

● 国土総合開発的な発想は戦後ずっと官界にあって,いろいろやってきたが,ことごとく失敗してきた。地方に新幹線を延ばせば,ストロー現象でかえって地方は衰退する。
 今の日本を支えているのは東京一極集中であって,これを潰せば日本は終わる。地方の時代は日本が終わってから実現するだろう。

● 地方に移ったのでは社員の知的水準を維持することも難しくなる。「大浴場,バーを備えた社宅(140室)や寮も完備する」といったって,社員にしてみれば,社宅なんて息が詰まるだけだ。長くは居られない。
 それ以前に,東京勤務を前提に住居を構え,家庭を維持している社員のかなりの部分は,淡路島に引っ越すことはできないのではないか。

● 自分で会社を起ちあげた創業者社長がそんなことを知らないはずはない。わかったうえでやっている。
 となれば,今回の本社機能移転は,体のいいリストラということになる。移転に対応できない人は辞表を出してね,会社の転勤命令に従えないんだからね,という。

● ひょっとして割増退職金を支払って辞職希望者を募るという普通のやり方を採用できないほど,業績が傾いているんだろうか。
 のんびりと田舎で暮らしたいという人には願ったり叶ったりなんだろうけどねぇ。満員電車での通勤からも解放されるんだし,終電を気にして残業することもなくなりそうだし。でも,そういう人は少数派ではないか。大方の社員は東京に残りたいと思っているだろう。

● 淡路島に移転する職能は,いずれはAIに置き換えられるものなのだろう。本社機能と呼ばれるものが,最もAI代替性が高いだろうから。
 人材派遣会社は悪く言えば女衒業。理想だけをいえば,雇用したい会社と働きたい個人が直に向かい合えるように,求人・給食情報が高速に流通するといいんだけども。そうして,上前をはねる人材派遣会社を中抜きできれば一番いいんだろうけどねぇ。ま,なかなかそうはならないだろうけど。

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