2021年10月14日木曜日

2021.10.14 GoTo の是非論

● コロナが事実上のゼロコロナ状態になった。となると,さっさと制限を前面解除しろ,GoToを再開しろ,という意見が出るし,逆にそれは性急だという意見も出る。
 経済評論家を名乗る門倉貴史さんが,次のような意見をネットに表明したらしい。
Go Toキャンペーンで恩恵を受けるのは,観光・旅行に行くだけの経済的・時間的余裕のある層が中心となる。経済的・時間的余裕のない低所得層は恩恵を受けることができないわけで,このような政策は新内閣が掲げる「成長と分配の好循環の実現」の方針と矛盾することになるのではないか。再分配と消費の増加を同時に実現しようとするのであれば,消費の選択が左右されず,低所得層のほうが経済的な恩恵を大きく受けられる消費税率の引き下げのほうが,効果が大きいのではないか。
● これに対して,永江一石さんはTwitterで次のように反論している。
GoToでもっとも恩恵を受けるのはちょっと足してあげるからあなたはお金を使いなさいといわれて浪費する旅行者ではなく,コロナの過剰対策で苦しんだ地方の観光や農業、漁業まで全ての産業なんだが
これで経済評論家ならワシでも名乗れるわ
低所得者の大半は年金暮らしの高齢者。コロナの影響なんてない
● この反論を受けて,次のように言う人もいる。
経済学者の言とは思えない
GOTOの目的は,事業者と関連業界のテコ入れだと素人でもわかるのですが....
年金暮らしの『資産家』から埋蔵金を吐き出させる経済効果もあるのです
令和元年度「高齢者の経済生活に関する調査」(内閣府)の結果では,60歳以上の人の約4分の3が心配なく暮らしている
● これに関する自分の意見をまとめておきたい。と言っても,永江さんの意見に賛成ということで終わってしまうのだが。
 門倉さんは何のためのGoToかを見ていない。低所得層が云々という話がどうしてここで出てきてしまうのか。
 言論人,知識人のすべてがそうだとは言わないが,政策全般の前提に格差の是正や弱者への福祉的視点,もっと言うと社会主義的な視点がなければならないと考えているようだ。だから,最初から結論は決まっている。何も考えていないし,考えるということをしたことがないのかもしれないとすら思えてくる。

● たしかに「GOTOの目的は,事業者と関連業界のテコ入れ」なのであって,GoToで旅行をする人ではない。彼らは「事業者と関連業界のテコ入れ」をするための道具だ。
 GoToではなく,その予算額をそっくり,関係事業者に現金補助すればいいではないかという意見も,いまだに野党から出る始末なのだが,これはいくつかの意味で論外。
 第1に,必ず不正が行われる。第2に,不正がなくても,結果において間違いが起きる。出すべきところに出すべき額を出さずに,出すべきでないところに出すべきでない額を出してしまう。誰がどれだけ凹んだかを間違いなく把握する方法などないからだ。

● そして第3に,そのやり方では予算額だけの経済効果で終わってしまう。乗数効果が見込めない。
 旅行する人にお金を出すことによって,予算の何倍ものお金が動く。自分のお金にGoTo補助分を上乗せして旅行するからだ。
 旅行者はホテルに籠もっているわけではない。動いてくれる。街に出て,食事もするし,お茶も飲む。買い物もする。その前に交通機関を利用する。電車か飛行機か夜行バスか,それは色々だろうが,ピンポイントではなく広い範囲にお金が落ちる。
 どの業者にどれだけのお金を落とすかは旅行者が差配するから,事業者や役人が鉛筆をなめる余地がない。なめなければならないシチュエイションを惹起しない。

● ただし,今だってGoToは実施されている。ホテルや旅館が自己負担でGoToをやっている。首都圏に多い。東京五輪をあてこんで開業したホテルは軒並みそうだろう。
 コロナ以前に比べれば,宿泊費が半額になっているところもある。銀座のビジネスホテルの宿泊費が地方都市よりも安いという逆転現象も起きている。
 これで適正利潤が出るわけがないから,サッサと国がGoToを実施して,当事者の負担を減らせという話になるのだ。

● GoToをやれば事業者が自己負担していた分がなくなる。その分,元々の価格が上がる。その何割かをGoToが負担することになるので,消費者が自身で負担する最終価格は今とさほど変わるまい。
 唯一,今,予約して,宿泊するまでにGoToが実施されるとそこからさらに何割か減額になるけれども,GoToが決まってから予約しても遅いよ,と。

● ので,埋蔵金を吐き出す人(上の意見では,低所得者=高齢者=年金生活者=資産家)は,もうとっくに吐きだし始めているのじゃないか。お上の政策に関係なく,使うなら今だ,と。何せ,高齢者は毎日が日曜日なのだから,安値を選びやすいのだ。
 GoToが実施されたからといって,これまで使わずにいた高齢者層がドッと使いだすとは考えにくい。

● 使いだすのは,高齢者層ではなく,現役層,特に子育て中の人たちだ。子供を連れて出かけることになるだろう。
 客層が転換する。かつ,トータルで需要が増えることは間違いないだろう。

● しかし,だ。GoToの効果をあまり過大に見積もらない方がいいと思う。というか,GoToなどどうでもいいではないか。GoToなど待っていないで,今,行ったらいい。
 コロナ対策のしわ寄せを一身に受けていたこの業界の人たちに手を差し伸べることには,一も二もなく賛成する。
 この時期に低所得層がどうのこうのと言うのは,些末にかまけているという印象になる。そういう議論は平時にやればよい。

● わが家では今年はすでに60泊以上している。ワクチン摂取前に緊急事態宣言が出ている東京や神奈川に泊まった。良い時期にお金を使えたと満足している。
 9月以降は家庭の事情もあって,泊まりで外出するのは困難になってしまったが,それがなければ,二度目のワクチン摂取もすんだことだし,チョンチョン跳ねで首都圏のホテルでプチバカンスを決めこんでいるだろう。

● ちなみに,ぼくのオススメは東京五輪をあてこんで開業した新しいホテルだ。新しいとは使い勝手がいいということだ。既存ホテルと客室の面積が同じならば,新しいホテルの方が狭さを感じない。空間の使い方,レイアウトの取り方に感心させられる。
 加えて,風呂,トイレ,洗面といった水回りが快適だ。トイレと風呂が同じ場所というのはまずない。トイレだけで個室を確保している。浴槽も大きい。男性でも足を伸ばせるところが多いだろう。深さもある。

● ぼくなんぞは,もう温泉宿には行かなくていいなと思うほどだ。ホテルのお風呂で充分。
 今の時期なら湯を熱めにしてゆっくり浸かる。しっかり汗もかく。バスタオルで体をふけば,すぐそこにベッドがあるのだから寝そべることができる。弱冷房にして身体の粗熱を取るのは気持ちがいいものでしょ。
 また入りたくなったら,新しい湯を満たして,もう一度浸かればいい。贅沢なものだ。サウナがあるなら,部屋の風呂は遠慮して,1日に何度でも好きなだけサウナを楽しめばいい。
 入浴も含めて,首都圏のホテルを推奨。リゾートはアーバンリゾートに限る。

● 自然派もいるだろう。そういう人は好んで地方に向かうだろうから,ぼくは安心して都市がいいよと言うことができる。
 普段は田んぼしかないところに住んでいるから,非日常を過ごすところは都市がいいとなるのもある。

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