● 8月1日から6日まで,彼女と彼は香港に遊びに行った。19日から21日まで東京に行っていた。ぼくはひとり居残りだ。ここ数年,このパターンが多い。
不満はない。楽しんでおいでってなものだ。何だ,おまえらばっかり,なんていう気持ちは,天地神明に誓ってカケラも持っていない。
● 20代の前半まで,ぼくは旅行というものにまったく興味がなかった。何であんな面倒なことをするのかと思っていた。必要もないのにわざわざ移動して何が楽しいのかね。
出かける前の準備ひとつをとっても,面倒なだけだろ。何を見たって景色はひと目,湯豆腐はひと口だろ。第一,想像を絶する景色なんてあるのかい。だとしたら,君,君の想像力を鍛える方が先じゃないのかい。
というような憎まれ口を人に向かって吐いたことはないと思うけど,ま,そのように思っていた。
● が,宮脇俊三さんの作品を読んだことがキッカケで乗り鉄になり,ポツポツと旅行に出かける普通の人間になってしまった。
そのうち海外にも出かけるようになった。しかし,それでも独身時代は健気かつ可愛らしいものだったと思う。できるだけお金を使わないように,倹約を旨としたものだったしね。
● それが変わってきたのが,今のヨメと結婚してからで,外国好きの彼女のご指導のもと,けっこう贅沢な旅行もするようになった。
ディズニーランドの楽しさも,彼女に叩きこまれて,どうにかこうにか憶えることができた。
● なんだけど,飽きちゃった。海外に行きたいという思いが失せた。実際に行くより,誰かが書いた紀行文を読んでいる方がいい。
立派なホテルに泊まって,豪華な食事をしたいとも思わなくなった。時々,その手の案内書というかガイドブックというか,そうしたものを覗くだけでお腹がいっぱいになるようになった。
何というか,若い頃に戻っちゃった感じなんですよ。
● 今のところはヨメも豚児を誘って出かけることができているけれども,その時期もそろそろ終わる。そしたら,矛先がぼくに向いてくるのかなぁ。それが少々恐怖だったりする。
老夫婦で海外旅行? 都内のホテルでマッタリする? やだよ,オレ。友だちと行ってくれよ。ところが,ぼくほどではないにしても,彼女もあまり友だちが多い方じゃない。
● ともあれ。19日からの東京は,竹芝のインターコンチネンタルに2泊したもの。お盆過ぎの平日はだいぶ安い宿泊プランが出されるようなんですね。
1泊12,000円。二人で泊まってこの値段だ。破格といっていい。こういうのをヨメは見逃さない。しかも,10,000円の追加でクラブラウンジまで使えたらしい。
朝,昼,夜とラウンジで食べられるんだそうだ。カクテルタイムもあるんだろう。3食ホテルで食べて,お酒まで飲めるんだから,ほとんどタダみたいなものだ。
● 失礼にも,ヨメは,自分たちを棚にあげて言うんだけど,貧乏人が集まったって感じなのよね,とヌカしていた。まさしく,自分たちを棚にあげている。
でも,その光景は目に浮かぶ。クラブラウンジらしからぬふるまいが横行してたはずだよな。
同じ感想をすべてのお客さんが抱いたはずだ。自分を勘定に入れ忘れちゃう。
● こうした安いプランってさ,経営上はアリに違いないんだけど,スタッフの士気への影響を考えると,あえてやらないっていう方がよくない?
今どきだから,たいていのホテルは大衆化している。大衆化すれば反面教師のお客ばっかりになる。スタッフの士気はなかなか上がらないのが常態なのかもしれない。もっというと,大衆化以前から“お客がスタッフを育てる”っていうのは,かなりの程度フィクションだったと思う。
それにしたって限度というものはあるに違いない。
● とはいいながら,楽しかったらしい。豚児はずっとラウンジで勉強したり,飲みものを飲んでいたらしいから,雰囲気を壊していたA級戦犯かもしれない。
親子ふたりでインターコンチネンタル東京ベイに2泊して,しかもラウンジを使えて,費用が44,000円っていうんだから,何があったって不満を言うのはあたらない。
0 件のコメント:
コメントを投稿