● 川崎に来た。ミューザの隣のメトロポリタン川崎に今回は3泊。1泊朝食付き20,000円。3泊だから60,000円。それが全国旅行支援のおかげで36,000円になる。4割引き。2人で泊まってこの価格。 でもって,18,000円分のクーポンが渡される。県民割のときは宿泊日の翌日までに使わなければいけなかったのが,チェックアウト日から1週間以内に使えばいいことになっていた。自由度が増えた。
● ただし,このクーポンは使えるところが意外に少ない。県民割のときからそうで,全国旅行支援になれば少しは増えるのかと思っていたのだけど,そういうわけでもない。
この状況を見ると,全国旅行支援などに頼らずともうちは大丈夫だよと言っている飲食店が多い,したがって全国旅行支援を実施する必要性に乏しい,とも考えられる。
● あるいは手続きが煩瑣で,ギリギリの人数でやっている飲食店ではそんな事務処理に割いている余力はないのかもしれない。
役人は煩瑣が大好きだからね。どうでもいいような重箱の隅の厳格性を要求するのが好きだ。そうしないと自分たちが要らなくなることを知っているのかもしれない。
手続きを厳格にして,それが守られたかどうかを確認するくらいしか,自分たちにできることはないことは,さすがにわかっているわけだ。いずれはAIが取って代わってくれるでしょうけどね。
● ちなみに,県民割のときには宿泊費は半額の30,000円になった。クーポンが12,000円分。トータルでは同じといえば,同じ。
けど,クーポンをたくさんもらうより,その分宿泊費を安くしてくれた方がありがたい。現金の負担が減る方が,使えるところが少ない金券をもらうより嬉しいわけよね。
● このホテルは東京五輪をあてこんで2020年5月に開業した。そういうホテルはいくつもあったが,コロナで散々な目に合わされたのは誰もが知るところ。
ぼくらが初めてこのホテルに泊まったのは,2020年12月。以来,宿泊した日数でいえばダントツでこのホテルが多い。昨年の5月には15連泊した。15連泊できるということは住もうと思えば住めるということだ。
● 館内にコインランドリーがあるのが助かるし,複数のコンビニやショッピングセンターが至近距離にあるので,食事に困ることもない。
高級ビジネスホテルと言えなくもないが,直営のレストランの他に,テナントとして入っている日本料理の店がある。日本料理の店には行ったことがないが,直営レストランの水準に文句を言う人はたぶんいないと思う。
● 浴室とトイレがセパレートになっていることを始めとして,部屋(ぼくらが泊まっているのは標準的な部屋。広さは30㎡)の居住性,ベッドの寝心地に問題はない。とりわけ,浴室の使い勝手は出色。テレビはインターネットに対応している。Amazonプライムビデオや Netflix も見ることができる。
バスタオル等の補充についても,連絡すれば対応は速やかだ。このあたりは,外資系を含めたシティホテルにひけを取らない。
以上を要するに,このホテルはコスパがいい。ぼくのような育ちの悪い人間は,どうしてもコスパを重視してしまうことになるのだが,このホテルは泊まらなきゃ損だと思っている。
● 住める理由の第一は,しかし,そういうことではなくて,3階に宿泊者専用のラウンジがあることだ。
コインランドリーもここにあるのだが,電子レンジも2台置いてある。シューティングゲームのゲーム機もある。ノートパソコンも2台用意してあり,プリンターに接続されている。全方位対応というかね。
それ以外に作業用の大テーブルがドンとあって,パソコン作業やノートや資料を広げての作業ができるようになっている。今どきだから,用意されたパソコンを使う人はほぼいない。自分のパソコンを持ち込む。コンセントとUSBの充電ポートもある。
● 客室にはデスクはない(頼めば持ってきてもらえると聞いたことはあるが,実際に持ってきてもらったことはない)。少し前まではシティホテルでもデスクがあるのがあたりまえだったが,新しいホテルはそうでもなくなっている。
デスクが使えないと少々以上に不自由だったりする。どうしてもデスクがなければという人はビジネスホテルに泊まるのが間違いがないが,このホテルには3階の大テーブルがデスク以上の役割を果たす。
● 客室に1人でいると,どうしたって閉塞感を味わうことになる。ずっといるのは辛い。が,このホテルのラウンジは広い。南側は窓が大きく取ってあって,開放感がある。
しかも,時期による例外はあるが,だいたい空いている。椅子が6つ置いてあるのだが(コロナが収束すれば8人で使えるようになると思う),6つとも埋まったことはぼくが記憶する限りではない。一番多かったのが4人。
● 要するに,たいてい空いている。これだけの広さの部屋が1つ,無駄に放置されているという見方もできなくはない。ほかに使い途はないのかという議論は,ひょっとすると運営側にはあるのかもしれない。
しかし,この無駄が居心地の良さやゆとり,ある種のリッチ感を作ってもいる。高級ビジネスホテルにさせない要因のひとつは,このラウンジという名前のワークルームがあることだ。
● ぼくは,ここで過ごす時間が長い方の宿泊客の1人だと思うのだが,スマホをいじって遊んでいることが多い。 パソコンは持ち歩かないし,持ち歩く必要にも迫られないが,スマホ持ち込んで1日の見聞をまとめてツイートするなんてことは,ここでやっている。
● というわけなので,このホテルに何をしに来たのかと言えば,第1に朝食を食べに。第2に入浴のため。第3に完全遮光でグッスリ眠るため。
すぐに朝食にするわけにはいかないので,まずは風呂に入った。温泉の大浴場の良さは認めつつ,今どきのホテルは風呂(というより,水回り全体)が良くなってますよね。ここは近年のホントに顕著な変化でしょう。
● クラシックホテルという言葉があって,古くからあるホテルを珍重する気風があるけれども,実際にお客を泊めるのであれば,水回りだけは現代風に直しておかなければならないだろうし,直していると思う。
ぼく一個は新しいホテルに泊まるのがいいと思う。2020年の五輪に間に合うように開業して,コロナの洗礼を受けることになったホテルは押し並べて狙い目ではないかと思っている。でなければ,五輪に備えて全面改装をしたホテル。その意味でも川崎のこのホテルは,ぼくらのお気に入りになっている。
● まだある。ホテルはどんなホテルでも,ホテル単体ではホテルとして完結できない。どの街に存在しているか。それが大きい。
ホテルは街を背負うことになる。街に背負われることになると言ってもかまわない。舞台の魅力というか,ホテルがある場の魅力に助けられることもあるだろうし,その逆もあるかもしれない。ホテルによってはそのホテルがあることが,街の魅力になることもあるかもしれないが。
● そこで川崎の魅力はいかほどかということになる。川崎市は地形からして独特で,東西に極端に短く,南北(正確には,南東-北西)に長い。細長い市域に150万人が蝟集して暮らすメガロポリスだ。昔からの川崎はその南端に位置する。ぼくが知っている川崎も,その南端の川崎にすぎない。
地形の然らしめるところだが,川崎市のどこにいても,東京や横浜に出るのは簡単だ。が,川崎を縦断するのは容易じゃない。新百合から南端の川崎に行かなければならないとなると,かなり億劫ではないか。
● その故か,川崎には内に向かうベクトルはないように思われる(あっても非常に微弱)。川崎市はあっても川崎市民はいないという状況が現出しやすいのではないか。
しかし,内に向かっていないということは,よそ者によそ者と感じさせない開放感があるということであって,それがつまり都市性の核になるものだ。内に向かうベクトルはムラ意識を生みやすいが,それがないのを都市という。
ひょっとすると,川崎は日本で最も都市度(?)の高い街かもしれない。東北や北関東からの移民が楽に呼吸できるだろうから,それらの移民がじつはかなり多いのではないかと愚察する。
ちなみに言うと,横浜にはかすかに横浜村を感じることがある。
● トワイライトというのとはちょっと違うけど,夜の帳が降りてきたラゾーナ。整然とした人工的な都市空間。川崎で唯一,川崎らしからぬエリアというかね。 こういうのがそこら中にできてしまうと,川崎が川崎でなくなってしまう。それはいけませんよ。
● アトレとラゾーナの食品売場を回って,肴の買出し。でもって,部屋飲み。 以前は,こういうのに貧乏臭い趣がありましたか? コロナがそれを払拭した。実際,気安くていい。他者と関わらないですむ。酔ったら3歩歩いてベッドにひっくり返ればいい。
● 川崎駅東口のドンキに。ドンキにしか売っていない入浴剤があるんですよ。13包で398円の安いやつ。それがわが家のお気に入りなんですわ。 ということで,川崎もホテルも良し。