● 栃木県では,今日が県立高校の合格発表だった。午前10時に合格者の受験番号が掲示される。もちろん,その前から受験生や親,中学校の先生が詰めかけるという構図になる。
で,その合格発表の直後のシーンを見る機会を得た。
● 胴上げとか,派手なパフォーマンスはないですよね。東大の合格発表じゃないんだから。今どきは東大の合格発表でもそんなことはやらないか。
わりと淡々としていた。とはいえ,抱き合ってる女子中学生がいたりはする。
● 男子生徒に,付き添いで来たとおぼしき女性教師が声をかけていた。これも人生だよっ。わざと吹っ切ったような大きな声で。
男子生徒は答えた。・・・・・・まぁな。
● 初めて世間からはっきり結果の出る判定を下された。そこに自分の番号はなかった。初めての判定でダメだしをされてしまった。
傍らには自分を気遣ってわざと陽気な声を出している,母校の先生がいる。親にはどう報告しようか。同級生にはどんな顔を見せればいい?
万感をひと言にこめた,15歳の少年の「まぁな」だった(のだろう)。
● 入試とはいっても,倍率は1.2倍とか1.3倍といったものだ。大多数は受かる。落ちるのは少数だ。少数の人しか味わえない経験を彼は今,したのだ。
同じ経験をするなら,その方がいい。少なくとも希少価値はある。
大学入試だとそうはいかない。人気のある大学の入試ならば,5倍や6倍にはなるだろう。落ちるのが多数派だ。そんな試験で落ちてみたって仕方がない。落ちることに価値ある入試は,県立高校の今回の入試だけだ。
● 今日の結果がその後の彼の人生を決めることは,絶対にといっていいだろう,ない。臥薪嘗胆して第2志望の高校で勉学に励めば,3年後の大学受験で逆転できる,という大仰なことを言いたいのではない。
それ以前の話だ。入試の結果がその後の人生に何らかの痕跡を残すことなどそもそもないのだ,という,明らかな道筋を指摘しただけだ。
● しかし,15歳の少年にそれは見えていない。今日から,1週間か,あるいは1ヵ月か,ひょっとしたら半年か,鬱々とした日々を過ごすことになるだろう。
その日々は,しかし,彼の一生から見れば,彼の“黄金の日々”になり得る可能性がある。
そのことを15歳の彼に伝えたい。が,彼に伝わる言葉をぼくは持っていない。
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