2018年12月27日木曜日

2018.12.27 東京散歩 お茶の水

● お茶の水に来た。10年ぶりか。若い頃は,東京とはつまりお茶の水のことだったのだが。
 学生街という言葉が生きていた頃だ。中央大,明治大,日大,東京医科歯科大,順天堂大,ちょっと足を伸ばせば東大。ここは他とは違うという感じだったんですよね。学生街だから(いや,そうではないのかもしれないけど)大型書店や古書店も密集していて。
 ところが,お茶の水で降りることはまずないようになった。こちらの変化も当然ある。が,この街の変容も理由のひとつだと思っている。

● まずは聖橋を渡ってみる。ここに来るとたいてい絵を描いてる人がいる。
 今日はいなかった。穏やかで悪くない日和だと思うんだが。あれは休日限定なんだろうかな。

● 聖橋で真っ先に思い浮かべるのは,さだまさしの「檸檬」。昭和男の性というべし。

 まるで この街は 青春たちの 姥捨て山みたいだと 言う
 ねぇほら そこにもここにも かつて 使い棄てられた 愛が 落ちてる
 時の流れという名の 鳩が 舞い降りて それを ついばんでいる

 スクランブル交差点というのができて間もない頃のこと。今は斜めに渡るのはあたりまえになってて,スクランブル交差点という名称じたい,あまり使われなくなった。
 何だかねぇ,若いというのは愚かということでもあって,しかしその愚かさには抗し難い魅力もあってねぇ。

● 湯島聖堂。ここに来るのは二度目。神田川が区境になっているから,JRお茶の水駅は千代田区にあり,湯島聖堂は文京区になる。
 スッキリしたいい空間だと思う。必要な建物が必要なだけあって,それ以外の余計なも
のがないという印象を受ける。つらつら思うのは,昔の人は寒さに強かったのだなぁ,ということ。
 こういうものをちゃんと残してきたのは大したものだと思うし,残しておきたくなるものだろうなとも思う。東京って,こういうところがけっこうあって,そこが東京の凄いところだ。日本最大の観光地は東京だけれども,それにはそれなりの理由がある。

● 湯島聖堂の北隣りが神田明神。このあたり,区境が入り組んでいて,神田明神は千代田区になる。というか,神田明神を取り込むように千代田区が突きだしている。
 ここには初めて来た。ずいぶん立派なお社だ。
 門前の食堂には銭形平次の名を冠した定食(そばセット)があった。素通りした。こういう場所でこういうものを食べるのも悪くはないと思うんだけど,今日はその気にならなかったので。

● 善男善女が次々にやってくる。善男善女とは何かといえば,願うだけでご利益を得ようとする人のことね。図々しいといえば図々しい。願う暇があったら努力しろよってことだろうからね。
 が,人生は苦でできている。努力でどうにかできることなどほとんどない。である以上,ぼくらは誰もが善男善女にならざるを得ない。温かい目で見てやってくださいよ,お願いしますよ。






















● さて,ここで引き返すことにする。再び,聖橋を渡って,ニコライ堂。正式名称は東京復活大聖堂教会。ロシア正教の教会だ。ぼくなんかは,これがイスラム寺院だと言われても,そうなのかと信じてしまうだろう。
 300円を払って中に。宇都宮の松が峰教会とはちょっと違う。キッチュな感じは皆無。

● ぼくはどうもキリスト教会の荘厳には感応しないタイプのようで,ステンドグラスとか肖像画とか,少し飾り過ぎではないかと思った。密教にも同じ印象を持つんだけど,荘厳が過ぎてうるさいと感じてしまうんだな。
 しばらく中のベンチに座って内部の雰囲気に浸ってみたが,特に何の感慨も湧いてこなかった。いや,縁なき衆生は度し難い。暴言多謝。

● 御茶の水駅の御茶の水橋口に戻って,駿河台下まで歩くことにする。若かりし頃,御茶の水といえばこの区間だったのだ。
 シンボルは明治大学。明大通りというくらいだから。広い土地を求めて多摩に引っ越した大学もあれば,残って高層化に活路を求めたところもある。今となっては後者が正しかった。
 大学は単体で完結することはないのだ。場の力というのがあるのだろう。大学が巷から隠居してしまってはダメだ。

● ひょっとすると,大学の教養過程で体育実技が必修になっていたから,運動場を確保しなければならないという事情もあったのかもしれないと思ってみる。
 大学でどうして体育を必修にしておいたのか,今となってはよくわからないが,平成3年にいわゆる「設置基準の大綱化」と呼ばれる規制緩和が行われて,このバカげた規制は一応は消えた。遅きに失したのは常のごとしだが。

● 道路を挟んだ対面には日大のやはり高層ビル。何かとお騒がせの日大だが,幸いなことに,普通の人はかなり強度の健忘症だ。この騒ぎはじきに忘れられる。忘れられればなかったのと同じことになる。案ずることはない。

● このエリアのもうひとつのシンボル。山の上ホテル。泊まったことはない。作家先生をはじめ,文化人御用達のホテルというイメージ。ぼくなどが足を踏み入れてはいけない場所のひとつと心得ている。
 心得ているけれども,気になるホテルのひとつだ。天ぷらが有名だけど,食の水準が高いホテルなんでしょ。

● で,天ぷらでわからないことがある。天ぷらは揚げたてを食べなければいけないと言われる。冷めてしまっては何にもならない。
 ということはだね,天ぷらって酒の肴にはならない食べものなのか。たとえば冷たい日本酒を合わせるとする。日本酒はガブガブ飲むものじゃない。ビールじゃないんだから。チビチビとやる。当然,天ぷらは冷めてしまう。
 ということはだね,酒の肴になるものは冷めてもかまわないものに限られることになるね。

● あるいはこういうことだろうか。つまり,酒というのは腰を据えて長時間飲んでるものじゃなくて,さっさと切りあげるものだ,と。エビを一尾か二尾,揚げてもらって,それが冷めない間に飲んで,それで終わりにしろ,と。
 でなければ,少量ずつ揚げてもらえということかい。

● もうひとつ。天ぷらというのは,会話をしながら食べるものではないってことになるね。話に夢中になってたんでは,揚げる方は甲斐がないことになる。
 天ぷらを食べてるときの会話量はラーメンを食べてるときのそれと同等であるべし,ってことか。となると,デートには使えないね,天ぷら屋って。

● 坂を下ったところで三省堂書店が出迎える。中に入ってみた。20年ぶりか30年ぶりか。隣にあった書泉グランデはなくなっている。
 三省堂書店から小川町方面にブラブラ歩く。このあたり,千代田区の下町なんですかねぇ。何だか気持ちがイイなぁ。
 今回の散歩はここまで。そろそろ,今夜の宿に向かおうと思う。

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