2019年10月9日水曜日

2019.10.09 日本はこのままダメになってしまう? そうじゃないでしょ

● 夕方,田中泰延さんの次のようなTweetに接した。
「みんな揃って決まりを守れ」「人に後ろ指さされるな」「いい子にしてたら褒めてもらえる」日本人が大切にしていること。これ、よく読むと奴隷のルール。なぜ日本が先進国からこぼれ落ちていっているか。「人は人、俺は俺」「決まりは自分が作る」という人種の奴隷になりつつあるからである。
● ここで論点は2つある。ひとつは奴隷のルール。もうひとつは,日本が先進国からこぼれ落ちているということ。
 昔は強調できることが日本(人)の強みだと言われていた。よく言われるように,これは千古不易の日本人の美徳ではなく,工場生産に最適化する人材を作るために,主には戦後に流布した人工的な徳目に過ぎない。
 かつて,円高や貿易摩擦に対応するために,工場はどんどん海外に移転した。しかも,モノは効率的にどんどん生産できるようになり,人手が要らなくなり,雇用面でも生産比率においても,サービス業のはるか後塵を拝するようになった。

● サービス業といっても,代行業はネットでできるようになったので,基本的に要らない。金融も同じ。振込,支払がネットできるようになったのだし,株や債権もネットで売買できるようになったのだから,銀行や証券会社の窓口に行く必要はない。たまにATMで現金を補給するくらいの話だろう。
 接客も相当な水準にあるのでない限り,必要とされない。接待がないというのがサービスになる業種もある。その典型が回転寿司だ。あれは,安くて旨いのほかに,店員と口をきかなくてもすむからというのが,客を集める理由になっているはずだ。

● だから,これからのサービス業は,アイディアを出す類の仕事になる。その典型例をひとつ挙げてみろと言われれば,たとえば無印良品だ。あれは頭を使わないと出てこない製品群だ。
 無印は自分たちが考えた製品を他社に委託生産してもらっているが,この頭を使うサービス業というのは,じつは製造業の研究開発部門,企画部門でより求められるものかと思う。

● ともかく,もはや工場労働者の時代ではない。どの分野でも現状を変えられる人が求められる。現状を維持するだけの仕事ならAIやロボットがやるようになるだろう。いや,もうそうなっているのだが,ぼくらの常識は時代より遅れて生成する。
 だが,さすがに時代は大きく変わっていたことを受け入れざるを得なくなった。もはや,協調性は美徳ではない。協調性しかない人には,生きづらい時代だ。

● 人を傷つけることを過度に怖れる心優しい人もダメだろう。何らの波紋も起こさないような発言に,発言の意味はない。現状を変える,前に進む,というのは,必ず誰かを傷つける。現状が変わることで,職を失う人もいるはずなのだから。
 だからといって,それを怖れて言うべきことを言えないのではどうにもならない。

● そういうことだから,協調性第1主義は奴隷のルールというのは心から賛同する。
 ぼくも自身の認知に長いタイムラグを作ってしまった。奴隷ルールでやってきてしまった。大切な何かを捨てて捨てて捨て続けてきた感がある。
 修正を要する。かといって,奴隷のルールしか知らないんだよなぁ。誰かの奴隷にはならないと自分に言い聞かせることから始めるしかないだろう。
 奴隷にならないとは,しかし,勝手気ままにやっていいということではない。自由を回復するということだ。その自由を自分で律する必要がある。勝手気ままでは誰にも相手にされなくなるだけだ。

● 日本が先進国からこぼれ落ちているというのも,いろんな人が言うようになっている。その認識がどこから来ているのかというと,第1に日本はIT化に遅れたように見えることではないか。キャッシュレスが進まないのが,その筆頭だ。なぜそう見えるか。主にはここ10年ほどの中国の変化と比較するからだ。
 それから給料が上がらない。春闘の賃上げもわずかだ。民主党政権下では下がっていたのではなかったか。
 生産性も先進国中最下位と言われる。イタリアよりも生産性が低いのだ。どうなっているのか(って,理由はひとつしかない。やらなくてもいいことを大量にやっているからだ。したがって,生産性を向上させるのに業務を効率化するという発想ではダメだ。やらなくてもいいことを効率的にやっていたのではどうにもならない。やらなくてもいいことはまるごとやめるのが唯一の解だ)。

● 経済成長率も同じだ。先進国中,最も低い。最近は韓国が迷走して,あらぬ方向に向かっているが,その渦中でも,日本よりは韓国の方が成長率は高いのだ。
 物価が安い国になったことがあるかもしれない。とにかく,香港やハワイに行ってみると,自分の給料ではとてもここでは暮らせないと実感することになる。外国の物価はとんでもなく高くなっていた。給料もあがっているはずだ。なるほど日本人は貧乏になったのだなと思う。

● 吉野家の牛丼が380円で食べられるのが奇跡のように思えてくる。アメリカだったら,これで1,500円以下はあり得ないのではないか。
 これでは,日本に来る外国人観光客は増えるはずだ。逆に日本人はあまり海外には出なくなるだろう。海外ではお金が文字どおり飛んでいくわけだから。

● しかし,これは日本が貧乏になったということなのか。いいモノが安く手に入る素晴らしい国になったのではないか。日本人の実質可処分所得はかなり多いとも考えられる。
 まずいヌードルが1,000円もするアメリカでは,日本の倍の収入があったとしても,あまり嬉しくない。アメリカで稼いで日本で使うのなら最高だが,普通のアメリカ人がそんなことをするわけにもいくまい。

● 現在の日本が抱える天井に頭をぶつけている感,閉塞感は,経営が拙いからだ。ピラミッドの中位以下は減っているのに上が減らない。漕ぎ手は減っているのに船頭は全然減らない。そのうち,船頭が漕ぎ手を上回るのではないかと思うほどだ。
 しかも,船頭があっちだこっちだと勝手なことを言う。言わなければ自分の存在価値がないと思っているのだろう。もともとないのだから,黙っていてくれるとありがたい。

● しかし,この状態がいつまでも続くわけではない。少子高齢社会はずっと続くが,これほど上が詰まっている状況がいつまでも続いたら,それこそ日本は終わってしまう。
 終わってしまうんだから,ここはメカニカルに矯正される。それがどういうところに出ているかというと,たとえばTwitterでインフルエンサーと呼ばれている人たち,堀江貴文閥に属する人たち,田端信太郎さんとか箕輪厚介さんとか西野亮廣さんとか,従来はありえなかったような人たちが各界で陸続と誕生していることだ。
 その人たちの影響力を軽く考えない方がいい。そのあとに若い人たち,女性が続けば,日本はまだまだ行ける。ぼくは日本の将来についてはわりと楽観的だ。

● だいたい,世界の政治家,一国のリーダーの中で,安倍総理ほどの人物はそうはいないように見える。韓国は論外としても,英国のメイさんやジョンソンさんはどうか。
 バブル崩壊後の失われた20年は,じつはデフレ対応に必要な20年だったのではないか。対応した結果が今の日本だ。

● 欧米はまだデフレに対応しきれていないのだ。そうすることを迫られていない。それは政治や経済の宜しきを得たからではなく,日本に比べて遅れているからだ。
 Amazon,Apple,Facebook,Googleは日本からは出なかった。でもね,諸行は無常だからね。失われた20年はむしろ日本の強みというべきで,これから態勢を逆転できる余地はいくらでもあると思う。
 治安の良さは保たれているし,文化の堆積も揺るがない。逆転に必要なインフラは毀損されていない。

● いやいや,日本がどうなるかじゃなくて,自分はどうするかなんだよね。考えるべきは,国のことじゃなくて自分のことだ。
 自分の居場所を日本という国に限定する理由は少なくなっている。自分の居場所は世界。若い人はそのくらいに思っていた方がいいと思う。

● でもって,そのためには日本的奴隷根性は克服しなきゃいけないものだろう。協調できるのは今でも日本人の武器だと思う。が,協調しかできないのではダメだってことだよね。なぜって,それじゃ世界を居場所にすることはできないから。
 ではそういうお前はどうするのかと言われると。もうサラリーマンはやめるんだ。隠居するっていうかさ。奴隷のルールから少しは自由になれると思うんだよね。自分の努力によってではなくて,環境の変化によって。

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