● 「ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し せめては新しき背広をきて きままなる旅にいでてみん」と詠った詩人がいた。
この詩が発表されたのは,大正2(1913)年のこと。この頃のフランス行きは冒険でもあったろうから,今と比較するのは笑止だと思う。
● そのうえで。
フランス,行きたいですか。ぼくはいいなぁ,行かなくても。むしろ,背広の代わりにフリースのうえにダウンジャケットをはおって,近場に「きままなる旅」に出る方がいい。
近場と「きまま」は完全に両立するからね。
● 旅って,つまるところは脱日常だと思うんですよ。脱日常は遠くへ行かなくても達成される。隣町のホテルに泊まるだけで充分だったりする。
普段やっていないことを,普段いるところではない場所でやれば,それでいい。そんなものだと思う。
● 自分に引きつけて言うと,フランスまで出かけてベルサイユ宮殿やオルセー美術館を見て,リッツやクリヨンに泊まるのと(泊まったことはないけれども),東京に行って新大久保や不忍池を歩いて,上野のカプセルホテルに泊まるのは,ほとんど等価だ。
実際のところ,脱日常の度合いはそんなに変わらないと思う。
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