2018年4月15日日曜日

2018.04.15 宇都宮市立南図書館

● 栃木県内で最も居心地がいい図書館は,たぶん,ここだろう。ぼくが行ったことのある図書館は,限られているんだけど。
 なぜ居心地がいいかといえば,建てられたのが新しいからだ。新しいと何が違うか。耐震構造とか表には現れない部分ももちろんあるに違いないが,まずトイレスペースがゆったりしていて清潔だということ。
 これ,大きい。ウォッシュレットがあるのはあたりまえだが(公共施設では必ずしもあたりまえではないのだが),それに加えてキツキツしていないってことね。

● この施設はコミュニティセンターの機能もあって,会議室もけっこうな数ある。たいていの図書館には会議室や談話室があるけれど,それらとは度合いが違うというか,付け足しではないというか。
 ロビーの壁では常時,何かの展示が行われている。宇都宮南高校美術部の展示会であったり,地元出身の作家,立松和平さんのゆかりの写真を展示していたり。その他の図書館にはポスターとチラシしか貼られていないのと,ちょっと違っている。

● サザンクロスホールと命名された多目的ホールがある。コンサートにも使える程度に音響の良さも確保されている。座席の勾配や前後の距離もほどよくて,ホールとしてもなかなかにいいものだ。
 ただし,この名前はいかがなものかとは思っている。雀宮からサザンクロスが見えるはずはない。おそらく,南図書館にいろんな人が集まってクロスする(交流する)という願いをこめたものだろう。いや,一般公募で決まった名前だったか。

● 「南図書館のうた」というのまである。地元出身のせきぐちゆきさんが歌っている。YouTubeで聴ける。音質にこだわるなら南図書館にCDがあるから,借りればいい。
 この歌,ぼくはけっこう好きなんですよ。ひょっとすると,ぼくは子供の心を失っていないのかもしれないと自賛するんだけど,情緒に弱いところがあると評した方が正解に近いだろう。

● その「南図書館のうた」は南図書館を“憩いの場所”と言っている。ん? 待てよ。図書館っていうのは神経を研ぎ澄ませて文献にあたる作業をするところで,憩いとは対極にあるものではないのか。
 と思わぬでもないのだが,現実の市町村立図書館は憩いの場所になっているでしょうね。つまり,図書館でそうした作業をしている人はあまりいない。
 利用者の多くは高齢者で,だいたい備付けの新聞か雑誌を読んでいる。まさに“憩いの場所”だ。幼児を連れた母親も多い。図書館は子供を連れて行ける安全な場所なのだ。“憩いの場所”だ。

● 市町村立図書館はかなりの比率で,蔵書を収納するためにスペースの大半を使っている。図書を閲覧するための机やテーブル,椅子は総じて少なめだ。
 それで利用者が不便をかこっている様子もない。図書館は本を借りるところであって(無料の貸本屋),そこで本を読むためにあるのではない,と割りきっているようだ。

● 実際,図書館の多くは本を読むには不適なところだ。騒音に満ちているからだ。
 騒音の発生源は2つある。ひとつは,前頭葉がかなり萎縮してしまっているのだろうと思える高齢者からのクレームだ。いちいち伝えるほどの内容ではないのだが,人目を憚らない大声でスタッフに噛みついている。こうした病人のリハビリまでしなければならないのだから,図書館のスタッフは大変だ。

● もうひとつは,幼児が大声を出して動き回っていることだ。親子教室的なもの(絵本の読み聞かせ,紙芝居など)が図書館の重要な業務のひとつになっているようだ(絵本や紙芝居など,幼稚園や保育所でさんざん聞かされていて,子供たちは食傷しているのではないかと思うのだが)。
 おそらく財政当局からの予算の締め付けが背景にあるのではないかと推測する。利用実績を作って,こんなに住民からの需要があるのですよと,財政当局に訴えなければならない。
 問題なのは,そうしたものを閲覧室の一画でやっていることだ。他に場所がないのだから仕方がないのだが。

● 南図書館は,そこで本を読める数少ない図書館のひとつだ。閲覧のための装置がしっかりとある。部屋数が多いので,絵本の読み聞かせはそれ用の部屋を確保できている(たぶん)。
 ぼくの知る限り,南図書館以外で館内で本を読めるのは,芳賀町図書館と那須烏山市図書館,さくら市図書館の喜連川館,この3つだけだ。つまり,図書館に関しては,都市部より郡部の方が環境的には恵まれている。南図書館も雀宮にあればこそ,これだけ充実した施設を具現化できたのだろう。

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