● 昔読んだ,田中小実昌さんのエッセイを思いだした。どこかに行ったとき,たまたま来たバスに乗ってしまう,っていう。外国であってもおかまいなし。
行き先はもちろんわからない。フラッと乗ってしまう。行きたいところがあるわけじゃないから,適当なところで降りる。
● これを読んだときには,そういう人もいるのかという程度の感想しか持たなかった。が,最近,そのエッセイを思いだすことが多くなった。
つまりは,そういう行き当たりばったりに魅力を覚えているんでしょうね。
● では自分もやってみるか。といっても,これがなかなかできなくてね。運賃前払いと後払いのところがある。それだけで,ちょっとしたハードルになる。いちいち確かめるのが面倒くさい。
是非にというわけでもないから,そこで二の足を踏んでしまう。
● 路線バスを乗りこなすのは,地元の人にしかできないだろう。東京でバスに乗るって,けっこう以上に億劫で,少しくらいの距離なら歩いてしまえってことになる。
ま,乗りこなすんじゃなくて,行き当たりばったりなんだから,路線網を頭に入れておく必要はないわけだし,むしろ頭に入れちゃ面白くなくなると思うんだけど,それにしてもなかなかできない。
● で,勝手知ったる地元でやったらどうかと思いましてね。勝手知ったるといっても,じつはたいして知りはしない。自分が動く動線なんてだいたい決まっているから,そこから外れたところは未知の世界だ。
車で走るのも同様で,普通は目的地がある。そこへ最短で向かうことを考える。その線からそれたところはすなわち,未踏の世界だ。
● 宇都宮でも,最近は(正確にいうと,だいぶ前のことなんだけど)路線バスが走らないところを走ってくれる“宮バス”というのができた。マイクロバスだから,わりと狭い道路を走ったりもするのだろう。
あるいは,宇大循環なんていう今までなかった路線を走るバスもできた。
● 先日,その宇大循環右回りっていうのに乗る機会があった。JR宇都宮駅の東口からベルモールまで乗ったんですけどね。
急ぐ人は乗っちゃいけないバスだね。とっとと行けば10分もあれば着くだろうに,遠回りを重ねる。そこが面白かった。
初めて見る風景が次々に現れるからね。へぇー,こんなところがあったのか,っていう発見。子どもの頃の遠足を思いだした。
● ただ,何度か乗れば飽きてしまうはずだ。宮バスも同じ。楽しみの賞味期限は限られている。
やはり,知らないところでもこれができるようにならないとな。
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