● ぼくの前を歩いていた女子高生がいた。行き先はひとつしかない。駅だ。ぼくも駅に向かっている。
その子が駅ではない方向に曲がった。その先には小さな神社がある。
● 彼女がその社の前で手を合わせて何かを祈っていた。まさか,合格祈願ではないだろう。まだちょっと早い。
自身の心身に辛い状況を抱えているんだろうか。家庭に問題があって悩んでいるんだろうか。
● 自分自身を考えても,高校の3年間はこれまでの人生で最も辛い,というか思うに任せない,時期だった。当時のぼくには神様に手を合わせるという発想は浮かばなかったけど,彼女も当時の自分と同じなのかとも思った。
が,おそらくそうではないのだろうな。同じ悩みはないものな。ぼくにはぼくの,彼女には彼女の,固有の悩みがある。安易に共通項で括ってはいけないものがある。
● その彼女のたたずまいが美しかった。乙女とはこういうものだと思わせるものがあった。立ちどまってしげしげと眺めたわけではない。歩きながらチラッと見ただけだ。ひと目で充分だった。
祈りには,それが現世利益を願うものであっても,カタルシス効果がある。彼女もそれで幾分なりともスッキリできれば,その分,自分で自分を救ったことになる。
0 件のコメント:
コメントを投稿