2018年7月15日日曜日

2018.07.15 ふみの森もてぎ

● 初めて訪ねる機会を得た。“ふみの森”とはそも何もの? 町立図書館だ。
 ただし,最近の図書館は図書館としての単機能しか持たないところはほぼないだろう。コミュニティーセンターの機能が付加されているのが普通だ。会議室というか談話室のようなものがあり,ロビーをゆったり取って立って駄弁れるようにしてある。
 コンサートを開けるホールまで備えているところがある。壁は絵画や写真を掲示して即席ギャラリーになるように設えられている。ぼくが知る限りでは宇都宮市立南図書館が典型的な例だ。

● “ふみの森もてぎ”もそうなっている(ホールはないけれど)。展示もできる。会議や講演にも対応できる。“茂木町まちなか文化交流館”と名乗っているのだ。
 開館して2年になるらしい。町有林材を多用しているようで,木の香りがまだ残っていた。かなりの予算をかけた高級な造りだ(と思われる)。

● まず,スペースがゆったりしている。書架の配置もゆったり。本を読むための机と椅子もかなりゆったり。一人あたりのスペースが広い。
 書架は1階と2階にある。最大の特徴は,図書館で一般的に採用されているNDC分類ではない並べ方をしていること。書店の並べ方に近い。この方が探しやすいかもしれない。
 今はネット検索できるようになっているから,借りたい本やCDは予め検索して,番号を控えておけばいいわけで,並べ方はどうでもという感じもするのではあるけれど,書架を見ながら読んでみたい本を探すことも当然あるわけで,これはかなりの工夫だと見る。

● 1階には学習室がある。が,中に誰もいないのだ。休日の図書館で学習室に誰もいないという光景は,初めて見るものだった。普通は,中学生や高校生で満席になっているものだが。
 ちなみに,図書館の学習室で集中して勉強している生徒はほとんどいないというのも,ぼくの経験則だ。半ば以上は友人とお喋りするために来ているのではないかと思うことが多い。つまり,学習室は意外にうるさいところだ。

● では,茂木の中学生や高校生は図書館に来ないのかというと,そうではない。学習室ではなく,閲覧室の回廊(?)に設けられている机に座って勉強しているのだった。学習室より居心地がいいようなのだ。なにせ空いているのだ。学習室じゃないところで学習するのに気後れしなくてすむのだ。
 今どきの高校生はスタバとかタリーズを学習室がわりに使っているのであるけれども,茂木にはスタバもタリーズもないかもしれない。だから,これでコーヒーを飲みながら勉強できたら最高なのになぁと彼ら彼女らは思っているかもしれない。

読書室のブース。荷物もデスクに置ける
● 学習室や回廊のデスクのほかに,2階には読書室があった。こちらは大人向けのスペースなのだろう。書架の本をここでゆっくり読む,と。
 ここもガラガラなのだった。繰り返すが,休日の午後なのだ。
 外は酷暑なのだ。冷房が効いているここで,本を読まずとも居眠りをして過ごすこともできそうなのに,これだけ空いているのだ。

● 過疎地に住むことの得というのを思ってみた。こういう図書館を使えるのは大いなる得ではないか。
 借りる人も少ないから本も良好な状態で保管されている。宇都宮の図書館だとそうはいかない。とっかえひっかえ借りられるから,すぐにガタガタになってしまう。
 第一,図書館は本を借りるところではあっても,そこで本を読むには適さないところであることが多いのだ。ここは館内で本を読むことができる。そんな図書館はめったにないものだ。

● 過疎化というのは人口が減ることのほかに,年寄り率が増えることでもある。年寄りだらけになるのが,過疎地なのだ。
 自分もそう呼ばれる年齢になりつつあるのだけれども,年寄りが年寄りどうしでツルむほどつまらないことはない。どこぞにハイキングか山登りに行くとおぼしき爺婆のグループに電車内で遭遇することがある(これから増える時期だ)。大変に賑やかで周囲の顰蹙を買うのが常なのだが,爺婆でハイキングに行って何が面白いのかと思う。同窓会の開催に熱心な年寄りとかねぇ,何を考えているんだろう。

● 年寄りになったら,自分よりずっと若い人たちと付き合うべきなのだ。そうでなかったら長生きした甲斐がないじゃないか。
 しかし,そのためには,この人となら一緒に時間を使ってもいいと,若い人に思ってもらえる年寄りにならないといけない。そんな年寄りはめったにいない。
 が,付き合えはしなくても,彼らの近くで彼らの空気を感じることはできる。そのためにこういう施設を使うことはできないか。

● 施設側が想定した使い方,提唱する使い方ではなく,不純に満ちた動機(?)で使ってみる。施設を自分に引き寄せて,どういう使い方ができるか。
 それを考えてみるのが,過疎地に限らず,これからの年寄りが年寄り力を問われる局面になるのではないか。その程度の柔軟性は持っていた方がいいように思う。

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