● ぼくのように人生の半分以上を昭和の御代に過ごした者にとって,トンカツはかなりの贅沢品だ。とにかく肉は貴重だった。牛肉にとどまらない。豚肉も同じだ。
貴重ゆえに,トンカツの肉は薄いのだった。肉を叩いて延ばすのだ。これが面白いように延びる。って,体験したかのごとくに書いているんだけど,どうもそうだったらしいのだ。
● その薄く延ばした肉を切って,衣をつけて揚げる。それがつまりトンカツというものだ。そのようなトンカツであっても,充分以上に贅沢品だったのだよ。
だから,初めて,叩いて延ばしたのじゃない,厚い肉のトンカツを食べたときには驚愕した。驚愕したわりには,それを食べたのがいつ,どこでだったのかは憶えていないんだけど。
ただし,断言するけれども,社会人になってからのことだ。今あるような厚さのトンカツは,庶民が行くような店にはなかったのだ。
● 「さぼてん」はチェーン店で,全国のどこにもある。ありがたがる店ではないのかもしれない。ところが,ぼくのような者は,こんなに贅沢なトンカツを喰ったら罰があたるんじゃないかと思うのだ。
ごく稀にだけれども,「さぼてん」で串揚げを肴にビールを飲むことがある。こういう贅沢ができるようになったんだ,オレ,とか思う。
だけど,“オレ”の問題じゃなくて,時代の問題だね。“オレ”の努力の結果,こうなったわけじゃない。
● 今日は昼過ぎに,「さぼてん」でテイクアウトのカツサンドを買った。それに缶のヱビスビールを合わせて,昼食にした。
じつにどうも,けっこうなものだった。
0 件のコメント:
コメントを投稿